2015年3月17日火曜日

高目の見慣れない進行の評価⑤。

さて、前回のエントリで触れた高目からのあまり見慣れない進行に関する評価についてですが、東京創元社の碁楽選書「手筋が分かれば碁が変わる」の下巻では下図の手順が示されていまして、これを定石としています。



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つまり、双方ともに互角という評価なのでしょう。

瀬越憲作名誉九段の「囲碁大辞典」では同じ手順を示していますが下図の進行の方で黒は充分に有利であり、わざわざ内側からエグる進行にするのは打ち過ぎだというコメントが入っています。



Josekipediaによれば日本棋院の「定石大事典」では下図のような進行を示して「白やや良し」との評がされているとか。
定石大事典を持ってないので前後の文脈を見ることが出来ませんが、多分おそらく瀬越師と同じ文脈で語っているんじゃないのかなあ。



同じくJosekipediaによれば、KGSPlusでの囲碁指南でGuoJuanが下図を示して白の形が悪く黒が良いとのコメントをしているとのことです。


その一方で「簡明定石だけで勝つ方法」の増補改訂版である「ポケット簡明定石事典」では下図を示して「白は打てる」とのコメントです。

 


うーん、中国のプロ五段が白悪いと言ってる図から一手遡った状態で「白、打てる」というのもナンだなと思いますが、難解複雑な変化を出来るだけ避けるという本の主旨からすれば、白は及第点ということなんですかねえ。

とにかくまあ私としては「高目から仕掛ける」というのを最優先に考えますもので、迷わず内側からエグって相手の思惑とは異なる進行に引きずり込むということで行きたいと思っているのであります。

2015年3月16日月曜日

高目の見慣れない定石と定石はずれ④。

微妙に改題しながら話を続けていきます。

話の大元を正せばキリが定石はずれの始まりでありまして、ここから先はどう打ってもあまり良くならないのであります。


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高尾山の基本定石事典の下巻をチェックすればお分かり頂けるかと思いますが、キリではなく白も負けずに二段バネするのが正しい応手になります。


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双方共に断点が多い形ですが、黒からアタリ・アタリとヘボ碁の見本のような進行で行くと両アタリで切り返されます。


なので黒はまず断点を補強するツギが不可欠で、白はすかさず外へ首を出します。


この後、やはり隅にツケを打って、一般的には高尾山の基本定石事典にあるような進行で白がやや低位であることから「黒やや良し」のワカレになります。


一般的に黒はこれで充分であるとされているのですが、そこは殊更に事を好むワタシでありますからこういう無難なワカレになるくらいだったら最初っから高目になんて打ちませんよイヤだなあハハハということで、ちょっと見慣れないコースへとご案内しちゃう!となるわけです。


ツケ・オキ・キリとどこかで見たことのある手順で進行しますと、やっぱり黒は中で生きることになります。
この進行に対する評価というのが評者によってバラつきがありますもので、次回にその辺の話について書きたいと思います。


2015年3月15日日曜日

高目からよく見られる定石はずれのとがめ方③。

さて、ここからは発想を変えまして、始まりの図から一手さかのぼって、切ってアテた石を捨てる方向で考えてみることにします。
つまりアタリ・アタリでヘボ碁の見本、キング・オブ定石はずれを如何にして料理するかというテーマですね。


まあこうなったら大体こちらから何か仕掛けるということでなくても黒が良くなる以外に道は無いわけですが、どの辺まで厳しく追求出来るかが焦点になって来ます。

まず、オサエが先手になるので3本這わないと仕方が無いという時点で既にかなり白が悪くなっています。


三本這ったからもう安心とか考えて隅を手抜きして他に回りますと、すかさずツケて隅に事件を起こそうという邪悪なふくらみ・・・じゃない、たくらみが黒森さんサイドから提起されてきます。


おそらくツケられた時点で白番からはこんな展開を予想していると桃割れまして、一応白は治まった形になっています。


しかし、黒からはノゾキを利かせた後にヒキを打たずに内側からキリを入れるという手段があります。


このあと、白17ツギまでほぼ一本道になりまして、隅は黒が先手で生きた一方で、白石はといいますと下辺側で一眼作るのは無理臭い雰囲気で、かといって左辺側で二眼もしくは直四の生きってのもなかなか・・・ということで三本這った後にはしっかり隅を補強しておくことが不可欠ということになります。


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で、定石はずれとは言うけれども、そもそも定石通りの進行ってどうなってるの?という話を次回のエントリにて。

2015年3月9日月曜日

高目からよく見る定石はずれの咎め方②。

改題して、承前します。


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そのまま押さえ込んで二子を取り込もうとすると断点からシチョウやゲタの問題が出てきてロクなことにならないというところまで前回に書きましたが、じゃあ断点を守ればどうなるの?というお話ですね。
考えられるのは堅ツギとカケツギですかね。それに対してシチョウ有利と不利が絡んでくるわけです。

まず、カケツギはその辺の定石書によく出てくる定番のテーマになっていますね。


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まずツケに反撃出来ないので、隅から追い出されてしまい、はっきり黒有利になるという手順ですね。


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下手にハネて反撃するとノゾキを利かされて、あれよあれよという間に有名なユルミシチョウの問題の流れになってしまいます。


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なのでツケには二子を取り込みに行くしかないわけです。
このユルミシチョウは実戦で一回だけ決まったことがあります。

堅ツギにしたところで事情はあまり変わりませんで、ツケには反撃出来ません。
ただ、黒シチョウ有利だとツケるよりこの進行の方が白にとっては厳しいものになりそうです。


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切ってきた石を捕獲出来ないのでほぼツブレと言って良いでしょう。

ネタは尽きませんで、まだまだ次回に続きます。

2015年3月8日日曜日

熱く語りたくなる話。

ある日の某巨大掲示板、とあるスレでこういう投稿があるわけです。

高目芸人を自称する私としてはネット碁でもリアルの大会でも何度も何度もこの進行になったことがあるお馴染みの展開であります。

ツケてフクラミというよりは、下図のようにカケられてからコスんでハネる進行で同じ形になる方が多いですかね。


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白としてはケイマにカケられた時点で、下ツケに行くと台湾定石とか別府定石とか言われるような一手間違えると一気に敗勢に陥ってしまいかねない複雑な変化を含む大型定石に誘い込まれるのを嫌って、コスミから簡明にしっかりと隅で治まりたいという意図が見え隠れするかなあというところでしょうか。

ところがどっこい、正しく打ってもそうそう簡単には簡明に治まることを許さない手段がこちらには用意されておりまして、存外これが難しいのであります。

まず最初の図に沿って進行して行けば、黒シチョウ有利なら下図の進行で白はシチョウとオサエた二子の取られが見合いで対応に窮します。
こうなったら二子を見捨ててシチョウを回避するしかなく、隅に取り残された白石の面倒を見ているうちに周りの黒石が整って、シチョウを逃げた四子が浮き上がること必定となります。


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黒シチョウ不利でもゲタにカケればシボリが利いて滅法外回りが厚くなって黒有利と大体の定石の本では書かれています。


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シチョウ不利でも無理矢理取りに行くことが可能ですが、これは殊更に事を好むやり方で、私向けと言えるかもしれませんw


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断点から生じるシチョウとゲタが絡んで白はあまり良い結果を得ることが出来ないワケですが、じゃあ断点を作らない形に守ればどうなるかについて別エントリで見てみたいと思います。

今回の参考書籍